PEKOのひとり飲み

身辺雑記。心に移りゆくよしなしごとを飲みながら書いています。

『繕い裁つ人』@横浜ブルク13

昨秋、吉祥寺糸モノまつりに行った時にチラシが置いてあり、必ず観たいと思っていました。

今日はサービスデイと祝日が重なり、お昼頃のチケットカウンターは長蛇の列。他の作品は、チケット売り切れのアナウンスも…。

私が到着した時点では、この作品の残席は10席。
何故か最前列ががら空きだったので、一番前の真ん中をget!ラッキー(^-^)/

チラシを見た印象では、笑いあり、涙ありのコメディータッチのストーリーかと思いきや、「服は人生なり」とでも言うべき、真摯な職人魂が凛々しいお話でした。

公式サイトはこちらです。

美しいシーンの連続。洋服が好きな人だけでなく、生きることにちょっと疲れ気味の方におすすめしたい映画です。

絶賛上映中なので、細かいストーリー展開を書くことは避けますが、南洋装店の二代目店主である市江(中谷美紀)が、デパートからのブランド化のオファーを頑なに断るお話です。

自宅のアトリエでミシンを踏む市江。彼女は祖母(先代)を理想としていて、流行とは無縁の服作りをし、祖母が仕立てた洋服の修繕も請け負う…こういうお店は今ではなかなか探せないでしょう。

「人生を変える」一着を仕立てる…という文句がチラシにありますが、洋服を誂えるのは、人生のイベントと重なることが多いです。七五三、入園式、入学式、卒業式、入社式、結婚式etc.

しかし、歳を取ると、そういう機会もなくなってきます。自分が主人公になる場面が少なくなるのでしょう。

市江は、先代が作ったスーツを、持ち主が亡くなるまでお直しし続けます。型紙に記録される寸法は、人生そのものです。

大切な洋服はそんな風に着たいもの。

実は、私の母は洋裁学校を卒業し、若い頃は仕立ての仕事をしていました。私が子供だった頃は、既製服に良質のものはなく(あったとしても高価で)母は洋服でもバッグでも何でも作ってくれました。
自宅には足踏みミシンとボディー(トルソー)があり、6畳の寝室の隅に置かれていました。自分と家族のものしか作らなかったので、収入にはならなかったのですが。

(ところが、私はそんな母が嫌で、今でも捻れた関係が修復できない…母娘の関係は難しいのです。高校生くらいの頃、多分母と喧嘩して、未完成のままになってしまったワンピースが、今、私の手元にあります。現在は病んで施設にいる母との最後の思い出の品。)

そういえば、高校時代の同級生の中には、お母さんのお手製の制服で登校する人もいました。(裏地がみんなと違ったので判ったのです。。)

映画の中で、市江の高校時代の恩師(中尾ミエ)が、彼女を自宅に呼び出し、思い出の一着を死に装束にリメイクするよう依頼するシーンがあるのです。もちろん、市江は死に装束になんてしませんが。(もっとずっとチャーミングに仕上げます。)

…最期の時に何を着たいか、遺言に書いておかなくちゃ(^_^*)

市江の着ていた洋服や、外出するときに巻いていたストールがシックで素敵だったことや、いつも喫茶店で食べていた、美味しそうなホールのチーズケーキは、どこのお店の提供なんだろう…とディティールにも魅力は尽きません。