PEKOのひとり飲み

身辺雑記。心に移りゆくよしなしごとを飲みながら書いています。

ヘレン・シャルフベック−魂のまなざし@東京藝術大学大学美術館

フィンランドの画家、ヘレン・シャルフベック(1862-1946)の回顧展を観てきました。
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NHK Eテレの「新日曜美術館」で紹介されていて、必ず観ようと前売り券を買っておきました。会期は来週末までです。

しばらくぶりの上野公園。道路は舗装されて、動物園の手前には大きなスタバの建物が…。(何故スタバなのか?という気がしないでもないですが。)
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国立博物館の手前を左折…すると、これまた上島珈琲店の大きな建物が。
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よく見ると、「東京国立博物館黒田記念館別館」と書かれた小さな看板があり、この建物は博物館の一部だと判明。
しばらく来ない間に、喫茶店が充実しましたね(^^)やっぱりたまには来ないとね。。

コインロッカーに荷物を預け、520円で音声ガイドを借り、展示室に入ります。有料ですが、この音声ガイドの解説はよくできていて、制作当時の作者の状況や、美術史における位置づけなどが、素人にもわかりやすいです。必ず借りるようにしています。

この展示は、シャルフベックの人生と作品との関係が明確で、彼女の人生上の紆余曲折がその時期の作品にストレートに反映されていることが、はっきり見てとれる配置になっています。逆境にあっても辛さと向き合い、いかなる時も描き続けた一途さが、多くの人の共感を呼ぶのでしょう。

公式サイトはこちらです。

図録によると、シャルフベックは3歳の時に階段から落ちて左腰に傷を負い、一生杖が手離せなくなってしまったため、小学校に通えず、家庭教師から教育を受けた。家庭教師に素描の才能を見出され、11歳という異例の若さでフィンランド芸術協会の素描学校に入学。在学中の4年間に何度も優秀賞を受賞し、父親を結核で喪うも、奨学金を得てパリへ。リアリズムの技法を学び、人物を多く描いた。
そして、イギリス人芸術家と出会い婚約。しかしこの婚約は1通の手紙によって一方的に破棄されてしまう。
この時の傷心を遊牧民の女の苦悩に重ね合わせて描いたと言われる「ロマの女」。

シャルフベックは40枚ほどの自画像を残しているそうですが、それが今回の展示の見所の一つになっていて、技法や色彩のみならず、自己認識(自己イメージ)と表現との関連という視点から眺めるといろいろ考えさせられます。

ポスターになっているのは1915年の「黒い背景の自画像」。50歳を過ぎ、画家人生の頂点とも言われるこの作品を、シャルフベックは自分の墓石と見なし、当時恋した19歳年下のエイナル・ロイターへの手紙の中にそのことを書き記しました。この絵の背景上部には、彼女の名前がかすれた文字で書かれています。
やがてロイターは別の女性と婚約。この時の落胆と傷心の深さがその頃描いた作品には顕著に見られます。
ロイターの肖像画は、輪郭がぼやけ、目は洞穴のよう。一方、暗緑色の「未完成の自画像」は、顔面の半分が削られ、唇だけが赤い。
シャルフベックは、この時の苦しい思いを、ロイターに何度か書き送っているそうです。2人は結婚することはありませんでしたが、彼は生涯にわたって友人でありつづけたそうです。

1946 年にこの世を去る直前の2年間、シャルフベックは、ホテルの一室で静物画ばかり描きました。死の直前まで絵筆を手放さず、最後まで画家として生ききった人生。
今回展示された作品から、シャルフベックの才能と描くことに対する情熱に心打たれました。恋愛には不遇でしたが、世界大戦の時代を画家として全うできたことは幸せでしたね。